『田園の詩』NO.37 「国東新工会」 (1995.12.26)


 国東半島は≪み仏の里≫といわれ、その昔、仏教者を中心に、道を求める人の修行
の場として特異の文化を形成してきた所です。

 近年、この地の風光に惹かれて移り住んだり、Uターンしたりする工芸家が増えてき
ました。私もUターン組で、筆作り職人として、国東の地(具体的には大分県・山香町)
で暮らしています。


       
       廃屋の土地を買い取り、こんな立派なログハウスを建てて移り住んだ方もいます。
         なによりロケーションがすばらしい。(国東市・国見町) (2005.12.1写)



 工芸家のネットワークを作りたいと思っていた私は、旧知の仲間と一緒に呼びかけを
行い、この度≪国東新工会≫を結成しました。集まった工芸家は総数二十一名、十一
市町村に及び、職種は陶芸・竹細工・木工・藍染・ステンドグラス・仏像彫刻・表具・
鉄細工など十四業種の多岐にわたりました。

 「異業種・広域」交流という時代の流れを先取りしたような≪新工会≫への注目度は
高く、晩秋に宇佐八幡宮で開催した『第一回・作品展』は大盛況でした。

 ところで会の名称ですが、「国東の新しい工芸家の会、または、新工芸品(伝統的
工芸品だけに限らない)の会」という意味です。

 この単純な会名について、名付け親の私に対して、「もう少し豊かな発想の命名が
できなかったのか」という会員もいない訳ではありません。

 そこで私は、冗談半分に、「この名称には隠された意味が二つもあるんだ。まず
第一に『しんこうかい』は漢字で『親交会』と書くことができる。会員同士がお互いに
親睦を深め合う会という意味がある。第二に『振興会』とも書ける。工芸家を沢山
呼び集め、国東半島を工芸文化の花咲く里にしようではないか。」と解説して、納得
してもらっています。

 最近、都会の友人に会のことを報告し、「もし、地の霊が有るとすれば、まさに国東
の地霊が私達を結び付けているのではないか」という意味のことを話したら、「それ
なら、『国東信仰会』だネ」といわれました。

 住職として、日頃、信心とか信仰とか口にしているのに、第三の隠れた意味に気が
付かなかったのでした。                   (住職・筆工)

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